2013年10月14日

奇跡とは、現実と出会うということ

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(本日、地区の運動会)

「奇跡とは水の上を歩くことではなく、大地の上を歩くことだ」。臨済はそう言った。臨済宗の始祖。そんなことを言った人が宗祖なんて素敵だな、臨済宗。ぼくの師匠はヴェトナムの臨済宗竹林派法嗣ティク・ナット・ハンで、この言葉は彼を通して知った。

人間の能力が高まったところで、たかが知れている。スプーン曲げ、そりゃ目の前でやられれば驚くけど。ぼくもやってみたことがあるが、やはり曲がる、曲がると思えば。触っているというところにからくりがある。それはまぁいい。

キリストは、水の上を歩くことをはじめ数多くの奇跡を行った。それはその時代、奇跡の意味と必要があったから、奇跡を受け入れやすい(見やすい)精神的基盤がその時代の人びとにあったからだろう。また、天地を創造した神のエネルギーには、奇跡を起こすなど造作もないことだった。

現代ではいわゆる超常現象はトンデモの範疇で、多くの人は奇跡が起こっても奇術か詐欺だと思ってしまう。それに今の時代、奇跡を見てそれをナイーブに信じこみ、自我を捨てて真理の法則につき従う人がいるとは、ほとんど思えない。

サイババが奇跡を見せても、インドの田舎の人と日本人とでは、とらえ方がまったく違うだろう。ぼくらはすでに、素朴であることはできない。オバQ(古い!)を見ても、中身ばかりが気になってしまう。そのままの(神の)ストーリーを受け止め、生きることができない。

そんな時代の奇跡の意味とは何だろう。奇跡を見るときに、六根(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、意識)以外の感覚は必要がない。当たり前の物事が当たり前に見えているだけでいい。ぼくらは、日常の意識のまま奇跡に出会う。じつはとても簡単なことだ。

禅者は、日常感覚でとらえられる現実しか相手にしない。朝日を朝日と観て、紙を紙と観る。でも、その中に宇宙すべてが映っていると知る。それは認知の180度のシフトだ。臨済は「奇跡とは水の上を歩くことではなく、大地の上を歩くことだ」と言った。そのとき、人がたんに足で地面を踏んでいるのではなく、着地する一歩一歩がすべての答えになっている。それが進化の結論になっている。

超越的な奇跡を経由しなくても、現代は直接存在の本質に触れられる時代なのかもしれない。ぼくらはもはや超常現象としての奇跡を信じられなくなった。それは驚きと疑いの対象でしかない。しかし、奇跡を一枚の紙の中に観ることができる。

「もしもあなたが詩人なら、一枚の紙の中に雲を観るでしょう」(ティク・ナット・ハン)。詩人でなくても、雲を観ることはできる。相即相依(Inter being)の世界はありのままで奇跡だ。

(雲がなければ雨はないでしょうし、雨がなければ木は育ちません。そして木がなければ私たちは紙を作ることができません。紙が存在するためには雲はなくてはならないものなのです。もし雲がなければこの一枚の紙も存在できません。ですから、雲と紙は『相互存在(Inter being)』していると言うことができます)

同じように、ぼくらもすべてを映す宇宙の鏡だ。ぼくらという存在は、あるがままで奇跡と言える。だから「特別な誰か」なんかになる必要はない。ただ、平らな鏡になるべく素直になることだけは必要だけれど。

9月のある日の終わり、ぼくらの先達で親しき友となったアンフーンさんと肩を組みながら、彼女の口を通して知ったこと。

ヒーローはいない。ぼくらはお互いを映し合い、支え合う鏡なのだ。そこに映っていないものは、「自分」だけなのだと。

posted by ダー at 00:43| Comment(2) | TrackBack(0) | スピリチュアル・瞑想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 「マインドフルネスの奇跡」は、以前Dah さんが翻訳してくれたティク・ナット・ハン師の本でした。私は、マインドフルネスこそ奇跡を生むものであることを学んでいきたいと思っています。「私たちは、心を体に戻すことができれば、ありのままの自分という存在を生みだし、いきいきと生きることができる。それによって、すべてが「マインドフルネス」の中で起こるようになる(「ブッダの幸せの瞑想」p290)」。
Posted by いしい ひろし at 2013年10月14日 16:37
あれは絶版になって惜しい本でしたね。そのかわり「ブッダの幸せの瞑想」が、その最新バージョンになっています。心が体に戻る、その練習を今日も繰り返ししています。
Posted by Dah at 2013年10月26日 00:36
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